がうす通信第100号(2009/12/8)


リニア問題の現状と展望 リニア・市民ネット  川村 晃生

 リニア問題については本通信でもこれまで数回にわたって記事が掲載され、少しづつ問題点が明らかにされてきた。まず、伊藤洋山梨大学名誉教授の講演による学習会(於山梨県甲州市、09・2・7)が開催され、その際、問題に関心を持つ市民のネットワークが結成されたこと(『通信』95号、96号)、橋山禮治郎明星大学教授の講演による学習会(『通信』97号)、「リニア・市民ネット」からJR東海への質問書等の報告(『通信』98号)など、主だった動きが報告されてきた。 「リニア・市民ネット」としては、8月の長野県大鹿村の現地調査をふくめ、学習会を重ねることで理論武装することに力を注いできたが、一方事業を推進する側の最近の動きとしては、次のような点が挙げられる。(山梨のものに限る)

(1)09年9月、山梨リニア実験線の延伸に伴う黒駒トンネル工事で、山梨県笛吹市御坂町竹居地区の簡易水道の水源が枯渇し、住民100世帯に影響があった。暫定措置として上水道を接続したが、住民は「わき水を返して」と訴えている。

(2)リニアの山梨県内経済効果が140億円/年を超えるという、民間シンクタンクの試算が発表され、山梨県を訪れる人も1日あたり2万人増えるとされた。しかしこのあまりにも法外な試算には、各界から疑問視する声が相次ぎ、「根拠があいまいだ」「現実的な数字かどうか疑わしい」などの意見が出された。

(3)山梨リニア実験線の最後の未着工区間である浅川橋梁他工区の工事が11月上旬に着手されることになり、これで都留市の実験線以西の約16km区間ですべて工事が行われることになった。

 このような中で、11月14日、山梨県内の停車駅の候補地として名乗りを上げている笛吹市で、笛吹青年会議所主催によるリニア中央新幹線をめぐるパネルディスカッションが行われた。パネリストとして登場した荻野正直笛吹市長は経済効果や利便性を訴えたが、「通過点に効果はなく、100年後のために何をしてはいけないかを考えるべきだ」とか、「リニアに誰が乗るのか、リニアができて町が栄えるのではなく、駅を造らせてほしいと思うような魅力的な町づくりをすべきだ」といった識者の意見が相次ぎ、行政と市民との間の意識の乖離が目立った。このあたりにリニアはJR東海と行政とが主導し、冷めた市民がそれを批判的に見ているという構図が明らかになった。
 こうした状況の中で「リニア・市民ネット」もリニアを批判的に捉えつつ、単に学習するというレベルから実践的な活動に運動を拡大していかなければならない時期を迎えている。
 またもう一つは、リニア問題を政治レベルで議論してもらうことである。超党派の国会議員で構成されるリニア推進議員連盟なるものがあるが、そこでは、問題の本質は議論もされず、ただ歓迎ムードの中で事態は進行している情勢である。そこで民主党の参議院議員大河原雅子氏に面談の上、リニアの問題点を説明したが、引き続き社民党の辻元清美国土交通副大臣の秘書の方にもお目にかかり、大河原氏の場合と同様にリニアの問題点を説明した。今後国会議員の中でリニアに関心のある方々に集まってもらい、勉強会のようなものを開かねばならないと考えている。
 そしてそれらの活動に並行して、世論を盛り上げていくことも必要だろう。いまその第一弾として、来年の3月28日(日)に、東京で「リニア・市民ネット」と関係諸団体で大規模な集会を計画している。詳細が整い次第『がうす通信』の中でもお知らせするので、ぜひ多くの方々にご参集いただきたい。
 以上、簡単ながらリニア問題の現状と展望について記した。