がうす通信第101号(2010/2/15)


ナノテクノロジーは安全なのか アスベストと同様の影響も

 「ナノ」を称した製品は私たちの生活のまわりにすでにかなり出回っている。スポーツ用品、家電製品、キッチン回り、食品の包装材、衣料品、化粧品、洗剤、そして医療や農業関連、食品そのものにもすでにナノテク製品が市場に出ている。
 ナノとは大きさの単位で、1ナノメートル=10億分1メートル。物質がナノサイズになると全く新たな特性を持ち、化学的、電気的、磁気的、光学的特性等が著しく変化するようになる。
  このような物質が環境に放出されて生態系にどのような影響を与えるのか、化粧品や食品などに含まれるナノ物質が体内に摂取された場合の健康影響はどうなのか−などの問題がある。そしてこのような製品が市場に出る前に安全性の検証がきちんとなされてないことも問題である。

すでに身の回りに出回っているナノテク製品

その用途は、殺菌・抗菌剤として、日焼け止めとして、食品の着色、栄養添加物、食品の加工と保存用、粉状加工食品で固化防止、漂白、光沢添加剤、食品包装の抗菌化・紫外線遮蔽機能、追跡探知容器包装・・・などに及んでいる。

ナノテク製品を市場に出している会社(一部)

(出典:産業技術総合研究所/ナノテクノロジー消費者製品一覧から化学物質問題市民研究会が編集)

化粧品 135項目/388商品
アテニア、 アルビオン、ウテナ、エイボンプロダクツ、エスティーローダー、カネボウ化粧品、コーセー、資生堂、シャンソン化粧品、HC、ドクターシーラボ、ナリス化粧品、ニッピコラーゲン化粧品、ノエビア、ハーバー研究所、ビオテルム、ファンケル、ランコム

衣類 66項目/304商品
AOKIホールディングス、青山商事、アシックス、エディーバウアー、ゲオルグ・シューマッハ、ゴールドウィン、コナカ、シマノ、デサント、東洋紡、東レ、フットマークランズエンド、御幸毛織

電化製品 42項目/44製品
アイリスオーヤマ、コイズミ、コロナ、ソニー、東芝、日立、松下、三菱電機、三菱重工業

日用品 94項目/158製品
アイリスオーヤマ、バッファローコクヨサプライ、アーネスト、アミュール、イーベーシック、NAX、エス・ティ・エス、花王、クリエイティブステージ、ケンコー、コーセー、・・・

スポーツ用品 35項目/111製品
アメアスポーツジャパン、アメリカンボウリングサービス、SRIスポーツ、キャスコ、ゴーセン、UIC、マルマン、ミズノ、モーリス、ヨネックス

食品・飲料 26項目/36製品
アアム、アクアノア、アニモコスメ、アプト、イトーヨーカ堂&DHC、オフィスショーヤ、キリンビバレッジ、グッズマン、コサナ、J-オイルミルズ、WAQ、天利グループ、日本ルナ、ファーマネックス、富士フイルム、ベルテック、マルマンバイオ、ミナミヘルシーフーズ、ラボラボ、ロッテ健康産業

 上記は市場にナノ製品を出している会社の一部と考えられる。海外では消費者団体にテストされた日焼け止め19種は酸化亜鉛と酸化チタンのナノ粒子を含んでいたがそのことを表示していたのは1社だけだったという報告がある。ナノの安全性に議論があり、リスクを示す報告が数多く出されていることから、企業は広告から「ナノ」を削除し、隠すようになったと考えられる。

研究開発されるナノテクの利用、またその可能性

農業分野:太陽光、熱、又は害虫の胃の中のアルカリ条件に反応して、破れるように設計されたナノカプセル中に活性成分を封入。肥料、農薬を最小にする。ナノ遺伝子操作。
  環境修復:有機塩素系汚染物質、重金属などによる、汚染地下水や汚染土壌について、ナノ粒子を地中に注入することでポンプくみ上げや土壌の移送が不要となる。しかし、安全性の確認されていないナノ粒子を環境に放出することは大きな問題である。
  医療:目標とする患部(臓器や細胞など)に薬物を効果的にかつ集中的に送る。薬剤をナノカプセルなどで包み、途中で吸収・分解されることなく患部に到達、放出して治療効果を高める。
  人間強化:身体的機能の向上、脳の力を強化する薬剤/神経埋め込み。苦痛を和らげ気分をコントロールするための脳刺激技術など。ヒト生物種としての能力を超える人間強化に倫理的な問題が指摘されている。
  エネルギー分野:低電力消費量の固体素子照明(LED)、超高強度で軽量のナノ材料、電力送電線材料(銅より軽量で低エネルギー損失のカーボン・ナノチューブ)、燃料電池、・・・・・。

 カーボン・ナノチューブはアスベストのように作用する
  カーボン・ナノチューブは半導体トレイ、燃料電池の触媒電極などなどに使用され、軽量で非常に強度が高いことから、今後、送電線の材料などでの応用が期待されている。しかし、その形状がアスベストに似ていることから、その有害性が懸念されていた。2008年2月に日本で、同年5月にイギリスで、マウスの実験で多層カーボン・ナノチューブが中皮腫の前兆の病変を引き起こすことを示す研究が発表され、専門家の間に大きな衝撃を与えた。世界の主要メディアはイギリスの実験結果を報道したが、日本の主要紙での取り扱いは小さく、日本の研究については毎日(3月7日)、イギリスの研究については日経(5月22日)が報道しただけであった。
  また、単層カーボン・ナノチューブはバクテリアの細胞膜に物理的に穴をあけてバクテリアを殺す(2009年11月シンガポールの研究者ら)という報告や、カーボン・ナノチューブは実際にはカーボン・ナノチューブ+金属+不定形の不純物であり、これらの不純物が電気的特性、環境的輸送、変換、及び生態毒性に大きな影響を与えるとする報告もある。

日焼け止めに使われる二酸化チタンのナノ粒子は脳関門を透過し脳を損傷

 日焼け止めには二酸化チタンや酸化亜鉛のナノ粒子が使われている。これが体内に入るとどういうことになるだろうか。「二酸化チタンのナノ粒子はマウスの鼻から嗅球、大脳皮質、小脳、海馬などの脳の部位へ移動し、嗅球と海馬領域の細胞中に著しい変化をさせ、脳細胞に損傷を引き起こすことができる」との報告がある[Toxicology 20089]中国)。日本でも「母マウスの二酸化チタン(TiO2)ナノ粒子への暴露は、仔の中枢神経系の発達と機能に関連する遺伝子の発現に影響を与えるかもしれない」と東京理科大学の研究チームが[Particle and Fibre Toxicology ] に発表した(20097月)。脳関門を透過し、脳に入り脳細胞にダメージを与える、と言われている。
  また使用後洗い流されて環境中に排出されると微生物を殺してしまうことや、製造過程での労働現場での暴露なども懸念が指摘される。

【ナノテク問題市民学習会1月23日で安間武さん(化学物質問題市民研究会)と上田昌文さん(市民科学研究室)のお二人の講演があったので、その一部をまとめさせていただいた】

化学物質問題市民研究会ナノテク研究プロジェクトのホームページに詳しく見ることが出来る。
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/nano_project_master.html