がうす通信第101号(2010/2/15)


イタリア 裁判所が「携帯電話で脳腫瘍」を認める判決

                        2009年12月19日 アレックス・スウィンケルズ(放射線リスクの国立機関)
  イタリアの労働裁判所は、ブレスシアにある会社で管理職を10年間務めた男性の病気が職業的原因であることを初めて認めた。
彼は仕事で携帯電話とコードレスホンを長時間使っていた。

  問題の男性イノセンゾ・マルコリーニ(57)は三叉神経に良性腫瘍ができた。手術をして助かったものの、そのせいで生活の質はひどく低下した。イタリア労働保険省(INAIL)を相手にしたこの裁判で障害の80%が仕事によるものと認められ勝利したお陰で、彼にはいくらかの補償がされる。
  これは裁判官が電磁波の職業的暴露とその後に出てきた障害との因果関係を認めた初めてのケースである。裁判では、生物学者アンジェロ・リヴィス氏(パデュア大学の突然変異生成学教授、電磁波の人体影響の権威)とジョセフ・グラッソ医師(ブレスシアの神経外科医)が原告側の専門家の証人として証言した。
  レヴィス教授は3年前に連絡してきた二人の話しをした。一人はブレスシアの、もう一人はクレモナの住民で、イノセンゾ・マルコリーニ氏と大変よく似た仕事をしていた。彼らは顧客サービス課で働き、コードレスや携帯電話を絶え間なく使っていた。右手でメモをとりながら、左耳にいつも電話機を当てていた。クレモナの男性は悪性耳下腺種ができて、ブレスシアの男性は三叉神経結節に良性腫瘍ができていた。両方とも頭の左側に腫瘍ができた。
  レヴィス教授は科学研究報告のデータ(携帯電話会社の助成もたびたび受けた楽観主義的調査にもかかわらず、「とても警告的なデータ」だったという)から証拠固めをし、提出したリポートには外科的手術手順を記した神経外科医の報告も添付したと言う。
   裁判所が指名した第三者専門家がそれらの報告書の正当性を認めたことで、数日後に控訴裁判所が最終的に原因の因果関係を認めた。この判決の厳密な根拠はまだ明らかではないが、まもなく報告される予定だ。さらに最高裁がこの判例に対して(事実関係ではなく、プロセスの合法性に関して)判決を下すことになる。いずれにしてもブレスシア労働裁判所の判決は画期的である。
  レヴィス教授は、「裁判所から指名された専門家は、この問題に関する文献がないという事実に鑑み、病気と電磁波暴露との因果関係の存在はどうやら真実らしいというわれわれ専門家証言者2人の主張を受け入れた」と述べた。
  アップルレトロスモッグ(“電磁波スモッグキャンペーン”)という運動組織を立ち上げているレヴィス教授はさらに言う。「このようなケースはますます頻繁に起こるだろう。しかし、この問題について知識のある医者はほとんどいない」
  ブレスシアの判決を熱烈に歓迎しているゲノアの疫学者バレリオ・ゲナロはこう述べた。
  「今日、われわれ疫学者はどんどん減ってきている。ゲノアの研究所では、疫学者は私を含め5人で、全員が短期契約であり、まるで予防のために不可欠なこの仕事がまるで重要視されていない感じである。われわれの仕事はデータ収集だけではなく、それを解析し、人々がどうして病気になるのかを見つける仕事であることは明白である」
  レヴィス教授は、毎年世界中で100万人の脳腫瘍の症例が出ていると言う。
  「われわれは10年の潜伏期間をもつ病気であるものを計算している。だから、今はただ、携帯電話使用に関する最初のデータが集まりつつあるところでしかない。8歳で通学かばんの中に携帯電話を持っているような若い世代に携帯電話の過剰使用の影響がでるのは時間の問題だろう。いずれは深刻な事態になると私は懸念している」

レヴィ教授による証言内容

「携帯電話とコードレス電話の使用による職業的疾患の認知に関する控訴審裁判所の判決」
 みなさまに私の患者であるイノセンツォ・マルコリーニ氏に関して陳述します。
  マルコリーニ氏は携帯電話を集中的に使用した後、頭部に腫瘍ができた。頭部第5番神経(ガスナー神経節と三叉神経)の神経腫で、携帯電話を10年間、時間にして15000時間以上使用した後に発症した。
  また、ストラディオッチ氏は携帯電話を20年間、30000時間以上使った後で耳下腺種となり、INAIL(イタリア労働保険局)に対して訴訟を起こした。
  二人とも右利きで頭部の左側に影響を受けた。二人とも顧客サービスの仕事をしており、右手でメモを取り、左手で携帯電話をもっていた。その結果、携帯電話と同じ側に腫瘍ができた。ハーデルらの研究でもほとんどの結果がこう出ている。
  携帯電話を使用していた期間の長さは重要であり、ハーデルらの研究の結論を裏付ける要因になっている。ハーデルらは携帯電話の500時間から2000時間の使用、または少なくとも10年から15年間の使用によって頭部の腫瘍、特に頭部星状腫(ゆっくりと広がる腫瘍)と耳の神経腫に統計的に有意な増加が見られたと報告している。
  耳下腺の腫瘍に関して特筆すべき点は、携帯電話の使用との因果関係が認められるデータはインターフォン研究プロジェクト(サデツキー 2008)のイスラエル支部の科学的文献に1つあるだけということである。それはインターフォン研究報告の最近の発表ではほとんど無視されている。三叉神経腫に関する科学文献は何もない。
  イノセンツォ・マルコリーニ氏の裁判ケースは3つの異なる機関が評価した。
  署名者、B・サイア教授(職業病医学の教授)とG・グラッソ博士(ブレスシアの神経外科医マルコリーニ氏とサトラヂオッティ氏を執刀し術後の経過管理もしていた)
  1回審問で、検察側(彼らは科学文献も専門家証言者の報告も調べる努力をほとんどしていない)はこの病気と携帯電話の使用の間に因果関係があることを否定した。それ故、裁判所はイタリア労働保険局(INAIL)のほうを選択した。
  しかし、控訴裁判の前の審問で、オタヴィオ・ディ・ステファノ博士(ブレスシアの拠点病院の医療部長)はハーデル教授の4つの最新の研究データを引用し、重要な科学研究報告をした。(ハーデルの悪性神経腫の実例研究(2006年・2009年)、ならびにクンディによる包括的な分析(2009年))その報告の中では決定的な評価の根拠を明らかにしていないが、この種の研究に特有な「限界値」について提示している。たとえば、神経腫瘍、特に神経腫のリスクは、DECT無線電話や携帯電話の無線周波の「10年以上」の暴露で特に強い相関が見られるという具合に・・・。病気を発症する暴露期間の既往的数値は「10年以上」である。
  ハーデルらの2006年の研究では、10年以上の暴露でリスク因子が2.9と示された。これはきわめて有意な数値である。このように、専門家が「推定しうる結末」や、たとえわずかであっても「因果関係」に関する概念や推測を紹介すると、それが個人的な状況にあてはめられる。社会保障の面ではこれは重要な結果だろう。この「推定しうる結末」を認めるのは専門家の義務である。
  従って、ワイヤレスの電磁波を考慮するならば、少なくともイノセンツォ・マルコリーニ氏の癌の発症に寄与したことが「ありえる」と言える。
  控訴審裁判所は、判断を説明するにあたって次のように結論付けた。
  「考慮の際の問題点は次のように分析できよう:カルテに記してあるとおり、無線周波の暴露は『10年以上』という影響のある期間続いた。この『限界値』はおそらくマルコリーニ氏の癌の発生原因において重要な要因となったと思われる。病気による身体的幸福の損失の割合は80%と推測される」
  「今回のケースは私が知る限り最初の判例であるのであり、きわめて重要なものである。最高裁で異なる判決が出ることは難しいだろう」とブレスシアのデニーロ・ミナ主任弁護士(イノセンツォ・マルコーニ氏の弁護士)はきっぱりと言い切った。かくして職場での携帯電話の電磁波暴露が悪性の疾患を促す、あるいは少なくとも発生に寄与するという原因と結果の因果関係が公的に認められた。そして、それは次に身体的障害への理解とそれに対する補償へとつながる。今回の判決では80%と評価された。
  判決の全文を入手したらすぐにみなさまに送ります。理論的にはそれをすると20日間ほどの罰を受けなくてはならない可能性があるのですが、その間にこの情報を放送し世に広めてくだされば幸いです。心から  M.アンジェロ・レヴィス    (原文サイト)http://www.emfacts.com/weblog/?p=1220