がうす通信第110号(2011/8/6)


スマートメーターで健康被害が発生

アメリカでは導入を一時停止する自治体も

  加藤やすこ

福島原発の事故後、スマートメーターの設置が度々報道されるようになりました。スマートメーターとは、各家庭や事業所の電力使用量を記録して、30分ごとに電力会社へ無線周波数電磁波を使って情報を送信する新しい電気メーターです。今までは電気検針員が月に一度、巡回して使用量を調べていましたが、スマートメーターがあれば、電力使用量を適時把握して発電量を調整することができ、エネルギーの効率的な利用が可能になると言われています。このようなスマートメーターを利用したエネルギー利用のシステムを「スマートグリッド」といいます。

 経済産業省によると、将来的には、各家庭のデジタル機器や照明、太陽光発電、電力自動車などを結ぶ「ホームエリアネットワーク」を作り、スマートメーターを通じて外部ネットワークと接続し家庭内の家電の使用状況を遠隔操作できるようになります。電力需要のピーク時には、各家庭の電力消費を削減したり、電気自動車の蓄電池から電力を供給してもらい、余剰時に蓄電池に電力を供給することも可能になるといいます。スマートメーターは、単なる電気メーターではなく、将来的には電力の需給を調整する役割を持っているのです。

 スマートグリッドの構築は世界的な潮流です。CO削減のためにもエネルギーの有効活用が必要だと考えられています。欧州連合(EU)では2020年までに80%に導入するという目標を掲げていますし、韓国でも同年までに2400万戸に設置する予定です。

 

発生する電磁波と健康被害

 アメリカでは2008年までに約670万個のスマートメーターが導入されていますが、導入エリアでは健康被害を訴える人が現れ、社会問題になっています。例えば、カリフォルニア州で電気とガスを供給するPG&E社は、ガスメーターに450?470MHz(出力0.82W)、電気メーターに902?928MHz(出力1W)を利用し、電柱などに設置したアクセスポイントを経由した後、既存の無線ネットワーク(携帯電話網など)を通じて情報を同社へ送ります。

 なお、電気メーターから約30cmの距離で電力密度が8.8μW/?になると説明しています。電磁波の影響について研究してきた、世界的に著名な科学者が結成したバイオイニシアティブ・ワーキンググループの勧告では、無線周波数電磁波について0.1μW/?以下になるよう求めていますから、同社の予測値は非常に高く、危険ではないかと感じました。

 ところが、実際の被曝量はもっと高いと指摘する報告書があります。カリフォルニアでは健康影響を懸念する住民が増えたため、カリフォルニア州議会議員はカリフォルニア科学技術評議会(CCST)に対して、スマートメーターの評価を行うよう要請しました。

 CCSTが今年4月に発表した最終報告では、約30cmの距離で180μW/?(出力1W、作動サイクル50%の場合)と発表されました。これはPG&E社の見積もりの約20倍、バイオイニシアティブ勧告値の1800倍です。スマートメーターから30フィート(約9m)離れれば電力密度は0.2μW/?、100フィート(約30m)離れれば0.018μW/?になるとも書かれていますが、日本で同じような被曝状況だった場合、自宅や隣家のスマートメーターからこれだけ離れるのはかなり難しいでしょう。
 今年1月には、バイオイニシアティブ・ワーキンググループのメンバーでもある、シンディ・セイジさんが主催するセイジ・アソシエイツが、スマートメーターの評価報告書(以下、「セイジ報告」)を発表しています。コンクリートやステンレスなどの建材が在って電波の反射係数が高くなる場合、メーターの作動サイクルが異なる場合などを考慮して、詳細な計算を行ないました。さらに、メーターが1台の場合と、複数設置された場合、コレクターメーターが設置された場合も想定しています。コレクターメーターは、通常のスマートメーターが使用する電波のほかに、824MHzの電波で近隣のスマートメーター(500?5000戸)と通信を行なって情報を集めて送信するので、設置された家は被曝量が増えます。

 



 例えば、育児室の壁にスマートメーターが一台設置され、約27cm離れた場所に子ども用ベッドがある場合、ベッド上で140μW/?(反射係数60%、作動サイクル100%の場合)になります。同じ条件でコレクターメーターが設置された場合は395μW/?です。
 スマートメーターが導入された地域では、耳鳴りや頭痛、動悸、不眠など電磁波過敏症によく似た症状を訴える人が増えています。カリフォルニアに住む電磁波過敏症の女性は、スマートメーターが設置されてから症状が悪化し、まだ導入されていない地域への転居を考えているというメールをくれました。アメリカの市民団体電磁場安全ネットワークには、「スマートメーターが約7.5m離れた家に設置されてから頭痛やめまい、動悸がおきる。郊外に行くと元気になるが、自宅に戻ると症状が再発する」といった声が、カナダやオーストラリアなど各国から届いています。
 ロンドン帝国大学のゴールズワージー博士は、健康影響のほかに、サイバーテロを受ける可能性、無線を傍受されてプライバシーが侵害される可能性などを指摘し、スマートメーターの設置に反対する文書を議員に送っています。スマートメーターから送られる電波を傍受すれば、電気使用量が刻々と記録されているので、いつ家に帰ってきたのか、いつ入浴し、いつ眠るのかも分かってしまうからです。このような状況はプライバシーの侵害だけでなく、犯罪に利用される可能性も大いにあるでしょう。
 アメリカやニュージーランドでは、スマートメーターが発火する火災も報告されています。セイジ・アソシエイツは、メーターから発生する電磁波が配線に過剰な負荷を与える可能性を指摘しています。

スマートメーターは必要なのか?

 カリフォルニア州では42の自治体が、スマートメーター導入を一年間停止する条例を設けています。一年の間にスマートメーターから発生する電磁波の健康影響や、電波を第三者が傍受する可能性、火災の原因になる可能性などを検証し、問題がないとわかれば導入を認める方針です。
 日本では関西電力と九州電力の管内ですでに導入されています。その他の電力会社も昨年度から2012年度にかけて、続々と実証実験を開始しています。このままでは、日本でも諸外国と同様の健康被害が発生する可能性があります。スマートメーターから発生する電磁波は、国際がん研究期間(IARC)が「発がん性の可能性がある」と認めた無線周波数電磁波です。どうしても設置するというのなら、せめて有線にするべきです。
 そもそも、経産省の掲げる「スマートハウス」を望む国民がどれほどいるのかも疑問です。結局、家電と電気自動車、太陽光発電のメーカーが潤うためだけの政策に見えます。太陽光発電を設置後、電磁波過敏症になった方もいます。今必要なのは、エネルギー利用を含め、どのような社会に変えていくのかを議論することでしょう。エネルギーをたくさん使って便利に暮らすのが幸福なのか、与えられた環境で「足るを知る」ことが幸福につながるのか、真剣に考えるべきです。