がうす通信第120号(2013/4/20)


欧州環境庁(EEA)「遅れた教訓 U」を公表  
フクシマ、電磁波を加える「Late LessonsU」 

 欧州環境庁編の「遅れた教訓」第2弾 レイト・レッスンズ II(Late lessons from early warnings II )が2013年1月公表された。

 第1弾の日本語版『レイト・レッスンズ 14の事例から学ぶ予防原則』は、2001年に、アスベスト、放射線、オゾン層、狂牛病などの事例から「予防原則」の必要性を明らかにしたレポートで、松崎早苗さんらが訳した日本語版が2005年に出版されている。いずれの事例も早期に警告はあったものが、「証拠はない」として無視し使用を継続したために被害を広げた、という共通点があり、「十分な証拠はそろっていない」などの主張よりも「疑いがあれば避ける」という『予防原則』が提唱されたものだった。

 今回の第二弾では、福島原発事故について、そして電磁波についても項目を設けて
「教訓」の中に加えられた。

  『携帯電話の電磁波に予防原則を!』

        以下EEA報告から電磁波の部分全文 (訳:加藤やすこ)

21 携帯電話使用と脳腫瘍のリスク:早期警告、早期行動?

    レナート・ハーデル、マイケル・カールベルグ、デヴィッド・ギー

 2011年、世界保健機関の国際がん研究機関(IARC)は、携帯電話と、同様の非電離放射線の電磁場(EMFs)を発生させるその他の機器からの電磁波を、グループ2B、つまりヒトに対して発がん性の「可能性」がある、と分類した。9年前にIARCは、頭上の電力送電線からの磁場を、同じ2Bに分類している。

 携帯電話に関するIARCの決定は、携帯電話使用と脳腫瘍の潜在的な関連性に関するヒトを対象にした2組の症例対象研究に、主に基づいている。それは、IARCインターフォーン研究とスウェーデンのハーデル・グループの研究だ。

どちらの研究も、相補性があり、概して互いに支持的な結果を提示した。本章は、2011年のIARC決定に至る議論とレビューだけでなく、二つのグループ?そして異なる結論を導いた他のグループの―研究の報告を述べる。また、様々なグループが、権威あるIARC評価を、非常に相違して、どのように解釈したかも記述する。

 携帯電話と脳腫瘍について、今までにいくつかのメタ・アナリシスとレビューがこれまでに発表されている。それらは、この問題について疫学的に行なっている問題、これまでに発表された主な研究の方法論的な限界、そしてそれらの結果の解釈の難しさについて述べている。

 脳腫瘍発症率の国レベルのデータは、症例対象研究で観察された携帯電話と脳腫瘍の関連性を、適格または不適格にするために使うことができるだろう、と提唱されてきた。しかしながら、方法論的な欠点に加えて、記述的な研究でわかっていない脳腫瘍の他のリスク因子への被曝の変化などの、全体的な発症率に影響する他の因子があるかもしれない。がんの発症は、病気の開始、促進、発達によって決まる。無線周波数電磁場の発がんメカニズムは、はっきりしていないので、脳腫瘍発症に関する記述的データは値が限られているという見解を支持する。

 この章は、多様な研究の検討とIARC発がん分類の考慮における携帯電話産業の無気力さを、そして潜在的な健康リスクについて豊富で一貫した情報を公衆に提供することにメディアが失敗したことを指摘する。IARC発がん性分類も、電磁波の広範な発生源から公衆衛生を守るという政府の責任の認識に、大きな影響を与えなかったことも示す。

 携帯電話通信の利便性は多数あるが、そのような利便性は、危害が広範囲に広まる可能性を考慮する必要がある。今、頭部への被曝を減らすための予防(原則)的行動は、存在するかもしれない脳腫瘍のあらゆるリスクの大きさと深刻さを制限するだろう。被曝削減は、脳腫瘍の症例研究で検討されていない、その他の潜在的な害を減らすことにも役立つだろう。

 神経膠腫と聴神経腫を発症した無線電話を長時間使うヘビーユーザーの労働者は補償されなくてはいけない、とする証拠が増えている。世界初の判決は、2012年10月12日に確定した。イタリア最高裁判所は、労働者のための保険団体(INAIL)が、無線電話を12年間使って脳の神経腫になったビジネスマンに補償を与えなくてはいけない、とした前判決の上告を棄却した。

EEA報告は福島原発事故を教訓に原子力を

予防原則から見る 『原子力のリスク再評価を!』

 フクシマの警告

  レポートの18「チェルノブイリからの遅れた教訓・フクシマからの早期の警告」では、
放射能の放出によって、将来もたらされるかもしれない、疾病に関するデータを統合する
こと、データ解析し、曝露とがんのタイプごとの発病診断との間の潜伏期間の評価を統合
することの重要性を説いている。また、「どのような綿密に計画された厳格な原子力リスク
評価であっても、疑わしいことはあきらかである。それは、不確実性と複雑性が伴うもので
あること、計算は事前の条件の仮定に基づくしかない、という理由による。」と述べる。

 そして、「原子力のリスクに関する今回の共有した知識を背景にしてヨーロッパ全域で、
立案された責任体制は有意な再評価を必要とするだろう。」と結論している。

 原文は http://www.eea.europa.eu/publications/late-lessons-2

翻訳は化学物質問題研究会のウエブサイトで見ることができる。

http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/LL_II/18_Chernobyl_Fukushima_summary.html