がうす通信第135号(2015/10/20)


  小平市 ドコモ基地局新設を阻止!
               岩本博子(小平・生活者ネットワーク 元市議会議員)
  突然の基地局設置の知らせに住民が動く
 事の発端は、今年3月の半ば、小平市上水南町3丁目の学芸大学の職員寮「ハイム学芸」の屋上にNTTドコモの携帯基地局の新設工事を伝えるお知らせの文 書が周辺住民に配布されたことから始まる。工事を担当する日本コムシスと小山電気製作所の連名の通知文書で3月27日から工事が始まるとの記載があった。
 知らせを受け、自宅目の前の建物に基地局ができることを聞かされた住民の方たちは驚き、電磁波による子どもたちへの影響などを懸念し工事の中止を求め、 素早く動いた。というのも、この場所は200以上の戸建てが並ぶ閑静な住宅街に隣接しており、子育て世代が多く居住している場所であるという地域事情も あったからだ。
 今回の活動はPTAや地域でのつながりがある若い母親たちが中心になって始まった。まず連絡先になっていた日本コムシスに設置反対の意思を伝えた。日本 コムシスの担当者からは、当初周囲の反対がある場合は、取りやめることもあるとの理解ある回答があり、住民側は希望を持った。ところがその直後に日本コム スンは交渉から外れ、住民との交渉窓口はそれまで一切おもてに出てこなかった事業主体のドコモに変わり態度は一変。住民はこの場所に設置する理由、電磁波 の影響などの説明を求めたが、ドコモからは納得できる回答がないまま工事は予定どおり進められようとした。社会的責任がある大企業でありながら地域住民に 寄り添う姿勢は全くなく、利益優先の企業体質が露になった。

    学芸大学に要望書を提出
 危機感を感じた住民側はドコモへの働きかけと平行し、携帯基地局の設置の許可権者でハイム学芸の持ち主の学芸大学に対する交渉に力を入れ、大学の担当者 のところに出向き直接不安を訴えた。実は、今回NTTドコモが基地局の設置を決めたハイム学芸は、建設当初にもを建設計画をめぐって周辺住民との間にトラ ブルが起きていた。建設に対して抗議の声をあげた住民たちはこの計画がもちあがる数年前に転居してきたばかりで、住宅購入時は想定していなかった住環境の 悪化を心配し4階建ての職員住宅建設に対して反対の運動が展開されたのだ。
こうした過去の経過もある中で、今度は目の前の建物に携帯基地局まで建設されると聞き何としてもこれを阻止したいと、子育て中の母親たちが設置反対の要望書を手渡した。

  議員、行政も連携して動く
 基地局建設問題が起きた3月当時、現職の議員だったわたしも住民の方から相談を受け、すぐにNTTドコモの担当者に連絡した。そして住民の不安の声を伝 えるとともに、そもそも工事のお知らせが配られたのがハイム学芸に接する数世帯のみに限られていたこと、説明内容も不十分であり、周辺住民の投げかけた質 問にも誠意ある回答がされていないことを指摘し、住民への説明責任を果たすまで工事の開始時期を延期するよう要望した。しかしながらNTTドコモ側では、 歩み寄りの姿勢はなかった。
その後、市役所の担当部長に連絡し、わたしからこれまでの経緯を報告した。市では以前議会での一般質問で基地局の設置に関して採り上げられていたことか ら、担当部でも携帯電話会社各社に基地局設置の際の住民への周知方法について確認し、その際NTTからは説明会は実施しないが文書で通知する旨の回答が あったと聞いた。当時のやりとりも踏まえて住民へのていねいな説明を行うよう市からも指導をして欲しいと要望し、その後担当課長からもNTTドコモに連絡 を入れてもらった。
 またこれは後日知ったことだが、別の住民の方から相談を受けた他会派の議員が住民とともに設置を許可しないよう学芸大学に行き働きかけを行ったとのことであった。

  基地局設置が中止となる
 上記のような粘り強い住民の方たちの働きかけ、また議員や市の担当部からの働きかけが功を奏したのか、工事開始予定日だった3月27日に状況急変した。 相談を受けた住民の方から、ハイム学芸の基地局設置が中止になった旨学芸大学から連絡が入ったと伝えられたのだ。わたしのところにもすぐに住民の方からそ の旨電話をいただいた。それまで住民からの訴えに耳を貸す気配もなく、工事延長にも全く応じる気配のなかっただけに急な展開に驚いたが、最良の結果につな がったことは大きな成果である。
 今回の結果が得られたのは、住民の方たちが電磁波について自ら情報を集めたり、各方面に粘り強い働きかけを行うなど大きなエネルギーを費やして活動をす すめたことが大きな力となったことは言うまでもない。さらに設置予定になっていたハイム学芸の所有者が社会的責任のある立場の国立大学であったこと。加え て建設当時のトラブルもあり地域との関係性への配慮が働いたことも大きな要因であったと考えられる。さらに議員や行政も連携して動いたこともNTTドコモ そして学芸大学へのプレッシャーとなったのかもしれない。こうした一連の動きをつくったことで基地局新設を阻止するという結果を得られたものと思う。

  事業者の説明会などを義務付けるしくみが必要
 今回の事例では、数件しか配布されなかった工事のお知らせを子育て中の若い母親が見逃さず、他の住民と力を合わせて迅速に動き、議員や行政ともつながっ たことで幸運な結果を得ることができた。しかしながら、たいていの場合は住民への十分な周知がないままにいつのまにか基地局が設置されてしまうという事例 が多い。これは現在の法律の中では、事業者に求められている地域への説明責任が不十分であることも原因のひとつにあると思う。
 いまや携帯はわたしたちが生活するうえで必需品と考える人が大多数となっており基地局の設置を完全に否定することはできないが、電磁波の身体 への影響の懸念もあり、携帯基地局を設置する際には近隣住民への説明会の開催は義務付けるべきである。すでに自治体として独自の条例を持っているところも あるが、ごく一部の自治体に留まっている。これまでも電磁波による健康被害を訴える市民の声があり、また今回のような事例があったことも踏まえて小平市で も説明会の義務付けなど事業者の説明責任について明文化する条例を制定する必要があると考える。