がうす通信第136号(2015/12/12)


 《米コンシューマーレポート》

     「ケータイをポケットから出しておくこと」

(原文サイト http://ehtrust.org/echoing-eht-advice-consumer-reports-recommends-reducing-cell-phone-radiation-exposure/)
携帯電話を使うのを止めるべきか?
 コンシューマー・レポートでは「携帯電話の使用をやめるべきだ」とは考えていない。しかし、心配な点もある。「携帯電話が癌を引き起こすことはいまのと ころ証明されていないが、これまでの研究結果を見ても、携帯電話を使う時に常識的な予防的措置を取ることが妥当だということは十分に示されていると思う」 と消費者リポートの上級科学者であるマイケル・ハンセン博士は言う。
コンシューマー・リポートは次のステップを勧める。
・携帯電話を頭や体から離して持つこと。
・できるだけ、Eメールやビデオメールを使うこと。
・携帯電話で話す時にはイヤホンを使うこと。
・携帯電話をズボンやシャツのポケットに入れないこと。カバンにいれるか、携帯電話用のベルトクリップを使うこと。
 
携帯電話に関する次のような観点に関して、明確な対策が求められる。
・FCC(米国連邦通信委員会)の携帯電話の暴露テストは機器がもたらしうる大人への影響を基本としている。しかし、研究では子供の薄い頭蓋骨は大人より多くの電磁波を吸収する恐れのことを示している。
・コンシューマー・リポートは米国小児科学会と連邦政府監査院がこのテストについてあげた懸念に賛同する。新たなテストは子供の潜在的な弱さを計算にいれて組み立てるべきだと考える。
・携帯電話メーカーはユーザーに携帯電話の電磁波暴露を減らす方法を顕著に明示すべきである。

幼児の携帯電話使用と
     電磁波暴露に関する最新の研究(要旨)

背景と目的
子供の携帯電話の使用に関する研究は普及に反して遅れている。この研究の目的は子供の携帯電話使用と電磁波暴露について調べることである。
方法
2014年10月から11月に、低所得者の人が暮らす都市部の小児科クリニックで6か月から4歳までの350人の子供を横断的に調査。
結果
ほとんどの家庭には、テレビ(97%)、タブレット(83%)、スマートフォン(77%)があった。4歳で半数が自分用のテレビ、4分の3が自分用の携帯 電話を持っていた。96.6%の子供が携帯電話を使い、ほとんどが1歳前から使い始めている。親が子供に携帯電話などの機器を使わせるのは、親が家事で忙 しい時(70%)、子供を静かにさせたい時(65%)、寝る前(29%)である。2歳児では、ほとんどの子供は日常的にこれらの機器を使っており、テレビ や携帯電話の使用時間はかなり多く過ごしていた。
ほとんどの3歳児、4歳児はひとりで携帯電話を使いこなし、3分の1はマルチタスキングもできる(複数のアプリケーションプログラムを同時実行する)。 YouTubeやNetflixなどのアプリは人気だ。自分専用の携帯電話などの機器を持つこと、最初に使い始めた年齢、日々の使用は、人種や親の教育と は関連がなかった。
結論
都市部に住んでいる低所得の家庭で少数民族の中の幼児はほとんど普遍的に携帯電話機器に触れていて、4歳になる前に自分専用の携帯電話を持っている。ま た、使用状況から明らかになったのは早くからの開始時期、使用頻度の高さと自立さ、マルチタスキングの使用です。子供たちのモバイル機器使用に関する家族 やプロバイダー向けの新たな勧告を出す為に研究が早急に求められる。

携帯電話の電磁波は癌をもたらすか?
携帯電話の電磁波と癌との関係の論争のなか、消費者はその答えを知るべき
                  デイビッド・シッパー
「携帯電話の電磁波は癌をもたらすか?」という科学的議論はここ数年、研究者たちの間で揺れ動き、医療従事者や携帯電話ユーザーを2つに分ける。1つは携 帯電話の電磁波を「それほど心配する必要はない」とするもの、もうひとつは「警告を与える為の十分な証拠は揃っている」とするもの。
 アメリカ人のほとんどは、「心配ない」側である。全国的な月刊誌「コンシューマー・レポート」での1000人の消費者に対する最新調査でも、携帯電話の 電磁波が「とても心配」と言う人はたった5%で、電磁波暴露を減らすためになんらかの対策を取っている人は半分にも満たなかった。
 多くの高名な科学者もそれに加わる。「携帯電話の電磁波が脳腫瘍や他の癌のリスクを高めるという証拠は何も見つかっていない」と米国放射線防護計測評議 会の議長であり、ヴァンダービルト医学大学(テネシー州、ナッシュビル)の医学部教授であるジョン・ボイス・ジュニア博士は言う。「心配なのはむしろ運転 中の携帯電話や携帯メールである」と。
 米国政府もそれほど深刻ではないようだ。アメリカ食品医薬品局(FDA)はウェブサイトで、これまでの研究では携帯電話と健康被害の一般的な関連は示さ れていないと言っている。連邦通信局(FCC)は携帯電話の使い方をユーザー向けの使用説明書にきちんと記載するようにメーカーに求めてはいるが、それは 概して非常に細かい字で読むのが難しい。
 しかし、誰もが無関心なわけではない。2015年5月、この問題に関して2000以上の論文を書いた39カ国の190人の独立した科学者たちのグループが、国連、WHO(世界保健機関)、政府に対して、携帯電話の電磁波暴露の取り締まりを強化するよう求めた。
 「私はワイヤレスの電磁波が健康被害をもたらす証拠は十分にあり、行政組織や科学者が市民に潜在的な危険性を知らせないことは正義に反すると思う」とニューヨークのアルバニー大学の健康環境研究所所長であるデイビッド・O・カーペンター博士は言う。
 ユーザーを守る手段、少なくとも子供に関する対策をとっている国もある。たとえば、フランス、ロシア、英国とザンビアでは子供向けの携帯電話使用促進の広告を禁止し、または子供の携帯電話使用に対して警告を出している。
 カリフォルニア州、バークレイ市議会も動き出した。2015年5月、「知る権利」法を可決し、これによって携帯通信販売業者はユーザーに携帯電話の正し い扱い方を知らせることが求められる。CTIA-無線協会、流通業界は5年前にサンフランシスコ市が同じく「知る権利」法を可決した時、阻止することに成 功したように、現在、この法律が有効になる前に阻止しようとやっきになっている。
 このように2つの科学的見解が揺れ動く中では、携帯電話を持つと言う90%のアメリカ人成人とおよそ80%のティーンに、明確な真実や確信を与えること はできない。はたして携帯電話の電磁波はどれほど懸念すべきなのか?コンシューマー・リポートの健康安全専門家がこれまでの研究を徹底的に評価し、いくつ かのガイドラインを提供する。

 携帯電話の電磁波はどのように人体に影響するか?
 携帯電話の高周波の周波数は、FMラジオから出る電磁波と電子レンジから出る電磁波の中間にあたる。それらはすべて「非電離」電磁波と考えられる。つま り、核爆発で生じる放射能やCTスキャン、X線とは異なり、携帯電話からの電磁波はDNAを破壊したり変化させたりさせるほどのエネルギーは持っていな い。(FMラジオや電子レンジには警戒は出されていないのは、それらは、使用する際に頭の近くに置く訳ではないということ、また、電子レンジは防護するた めにシールドされているということも一因である。)
 携帯電話の電磁波はもし癌をもたらすなら、それはどのように?
 高周波は高レベルになると水の分子を熱することができる。電子レンジで調理できるのはこのせいだ。人間の組織もほとんどが水なので、このような熱を帯び て、細胞が破壊される可能性があるとかつて科学者たちは心配していた。1996年に定められたFCCの携帯電話の送信テストでは、すべての携帯電話は市場 に出る前にこれにパスしなくてはならないのだが、これはこの熱効果に基づくものだった。
  しかし、今ではほとんどの専門家は高周波が人の組織を熱する可能性については心配していない。今、科学者が心配しているのは、携帯電話の電磁波をあびることで温度をあげることなく生物学的に影響を受けていることを示す最近の研究の実験結果だ。
 2011年、国立健康研究所の研究者は人の頭の近くで使われる携帯電話からの低レベルの電磁波が、体温の上昇がなくても、脳細胞の機能に何らかの変化をもたらすことを発見した。
 2015年のドイツの研究では、高周波がネズミの脳腫瘍を促進させることが分かった。この場合も暴露レベルは低く、体温をあげることはできないはずの低 い曝露レベルで。米国国立毒物プログラムはラットやネズミに低レベルの電磁波を浴びせる独自の動物研究を現在進めており、結果は2016年に出る予定であ る。
 大規模な癌研究が示す人への影響
 携帯電話が人間の脳腫瘍を増やすかどうかについて、コンシューマー・リポートは、人を対象にした5つの研究と、それらのフォローアップ研究に焦点を当てた。研究は100万人以上を対象とし、携帯電話の使用者を非使用者とを比較した。
 5つの研究の中で、特に、スウェーデンの研究、フランスの研究、さらに13か国の合同データの3つは、携帯電話の使用と神経膠腫や癌性の腫瘍、しばしば 致命的な腫瘍との因果関係をしめしている。研究のひとつは、携帯電話と聴覚神経腫(非癌性の腫瘍)を、2つの研究では、髄膜腫(比較的多く、通常は致命的 な脳腫瘍ではない)との関連を示唆している。

 今の携帯電話は安全化しているか?
 携帯電話の構造は上記の研究時から大きく変わっている。たとえば、以前の携帯電話に付いていたアンテナ、電磁波はここから出ていて、通話をする際に頭部 の近くに電磁波が当たったが、今は携帯電話の上部にアンテナは突き出していない。今はアンテナは電話に内蔵されていて、本体の下部に当たる。これは大切な 観点だ。携帯電話の電磁波暴露の強さは体からの距離によってミリ単位で変わる。
 最近、携帯電話で話すよりEメールに使うこと、またイヤホンを使う人も増えている。これは、携帯電話の電磁波を防護する最適な方法であろう。いっぽう、携帯電話を以前より多く使うことも事実であり、それゆえ、総じて暴露量が増えている可能性もある。