がうす通信第137号(2016/2/20)


スマホで学力低下     【データが証明】

横浜市教育委員会、仙台市教育委員会・東北大調査で判明
  「デイリー新潮」11月5日号、白石新(ノンフィクション・ライター)記事から抜粋
http://www.dailyshincho.jp/article/2016/02091815/
 スマートフォンが学力低下の原因になっている―。そんな調査結果が次々に発表されている。
 以前から、スマートフォンに没頭するあまり、学習時間や睡眠時間がけずられてしまうという問題は、指摘されてはいた。それが徐々にデータとして明らかになってきた。そしてスマホの使用が、学力低下に直接影響している可能性まで見えてきたのだ。
 仙台市教育委員会と共同で調査をおこなった、東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授で、「早急に手をうたなければ、大変なことになるかもしれません」と 警鐘を鳴らす。だが、そのおそるべきデータを見る前に、子どもたちの生活にいかにスマホが入り込んでいるのか、実態をながめてみよう。
「最近、中学校の昼休みがやけに静かだという声をよく耳にします」
 スマホをはじめ、ネットを介したいじめ問題などに取り組む団体、全国webカウンセリング協議会理事長の安川雅史氏が語る。「昔、と言ってもつい最近ま でそうでしたが、子どもたちは昨日見たテレビ番組のことを、翌日の休み時間に語り合ったものです。しかし、今の子どもたちはスポーツ中継とかを見ながら、 LINEなど無料通信アプリで、のべつまくなしに言葉を送り合っています。一日中、LINEでやりとりしているため、学校で直接顔をあわせた時に、なにを 話していいのかわからない。そのために、せっかく休み時間になっても、おしゃべりもせず、スマホでゲームやLINEなどをやってしまう。だから休み時間が やけに静かなんですよ」
■勉強時間は同じでも
 昨年8月、文部科学省が所管する国立教育政策研究所が「平成26年度全国学力・学習状況調査」の結果を発表した。その際、国公私立の小学校2万352校 と、中学校1万173校を対象とする悉皆(しっかい)調査も実施され、携帯電話やスマホの利用時間が短い生徒ほど、平均正答率が高くなるという結果があら われたのだ。
 たとえば小学生の算数Bの成績。1日のスマホ使用時間が30分未満の生徒の平均正答率が60・7%なのに対し、4時間以上と答えた生徒は43・ 6%と、スマホを使う時間が長いほど、正答率は顕著に低くなっていた。この傾向は中学の国語や数学の正答率においても、まったく同じだった。
 また横浜市教育委員会が中学生を対象に、スマホや携帯でネットやメール、SNSを毎日どれぐらいやるか、アンケートをおこなった結果、どの学年も約 50%が、1時間以上やっていると回答したという。これを同教委が、教科調査の正答率とクロス集計したところ、メールやSNSに費やす時間が長い生徒ほ ど、正答率が下がると判明した。たとえば、中2で30分以下と回答した生徒の正答率が64%なのに対し、3時間以上の生徒は51%と、激しく低下していた のだ。
 『学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト』の調査結果は、すべての仙台市立小 学校124校と同中学校63校、および中等教育学校1校に在籍する、小学5、6年生約1万7000名と、中学生約2万5000名を対象におこなったもの で、すると、「スマホや携帯を長時間使用すると、いくら勉強をしても成績が下がってしまうという結果がでました。衝撃的でした」と、前出の川島教授は驚き をかくさない。とりわけおそろしいのは、家庭での勉強時間が30分未満だと答えた生徒に見られたデータだという。要するに、ほとんど勉強しない生徒たちの ケースなのだが、「そういう子どもたちのなかでも、スマホを持っていないために、LINEなどの通信アプリを使用しない子どもたちの数学の平均点は、約 61点ありました。ところが、通信アプリを3時間以上使う生徒の平均点は、いきなり50点以下に下がってしまったのです。これはまさに何らかの原因で、子 どもたちの記憶が消去されているとしか考えられません。授業で教わった内容がきれいに消えて、努力が無駄になってしまっているのです。」
「脳の前頭前野と呼ばれる部分に抑制がかかるのではないかと。すると、血流が下がって脳の活動が低下するのですが、スマホでLINEなどに没頭している際 も、脳内で同様の現象がおこっているのではないか。脳の血流の低下が見られるということは、シナプスあるいはミトコンドリアのレベルで反応があって、脳の はたらきを低下させている可能性がある」
 もちろん、スマホを持っていても、学力が下がらない子どもたちもいるにはいる。同調査でも、
「スマホを所有し、なおかつ使用時間が1時間未満の子どもたちの間では、勉強時間が長いほど成績がよくなる傾向が出ました。スマホも上手に気分転換に使えば、必ずしも学力低下につながらないわけです」と、川島教授。
子どもたちは危険にさらされている。抑制力が弱い子どものためには、お酒やタバコと同様、ある種の規制を考えていく必要があるのではないでしょうか」
 実は、その必要性は、すでに国内外を問わずさけばれている。
 今年、ロンドン大学経済政治学院が発表した調査結果によれば、スマホを学校に持ち込ませないことで学力格差が縮小する、と判明したという。イギリスの 91の学校の生徒、約13万人を対象にしたこの調査は、16歳で受ける全国統一試験の結果と、学校における携帯電話に関するルールの変更との関係を調べた ものだ。それによると、すべての学力グループで、スマホの学内持ち込みを禁止することで成績が向上する傾向が見られたという。なかでも学力が一番低いグ ループの場合が顕著で、成績の伸び率指標は、他のグループの倍以上も高くなったのである。
 また国内では、東大や難関医学部進学率が全国トップクラスの進学校、兵庫県の灘中・高校でも昨年、スマホの利用が制限されるようになった。同校は自由な 気風を重んじ、校則がないことでも有名だが、スマホに関しては、生徒の自主性にまかせるには限界があったようだ。いま、こうした名門校でも、スマホ規制は 続々実施されている。
 野放しのスマホ使用による子どもたちへのマイナス効果は、想像以上に大きい。しかも、学力低下に直結しているなら、もたもたしている時間はない。こればかりは“既読スルー”は禁物である