がうす通信第73号(2005/6/12)


解説  音波と電磁波の健康被害
                                         有泉  均
 「がうす通信72号(2005.4.11発行)」で低周波音被害について汐見文隆さんの考察が掲載されていましたが、音波と電磁波という外見上まったく異なる二つの物理量と人間(の脳)との関係について、ここでは主として工学的モデルの側面から整理してみました。
 人間は、外界との情報交換に「音(周波数が可聴領域にある空気振動)」と「光(周波数が可視領域にある電磁波)」を用いるように、情報変換装置である内耳や網膜を備え、外界の情報を脳内神経伝達系の低周波電気信号に変換しています。これらの変換された信号は、それぞれ音(側頭葉)や光(後頭葉)の情報認識部に伝達処理されたあとで脳内深奥部にある大脳辺縁系にも送られ、感情誘発や内分泌系の生成調節などが行われています。これが健康な日常生活において行われる外部情報と人間(脳)の情報伝達のあり方です。
 これらの健全な生活に必要な周波数領域に含まれない音や電磁波には、人間は対応する手段を持たず、妨害雑音として脳内にとりこまれ大脳辺縁系に不快感(ストレスなど)を発生させることにもなり、長期的にはいわゆる不定愁訴(たとえば文献1)、2))やガンなどを引き起こす原因となります。特に100ヘルツ以下の超低周波領域(電波など高周波の搬送信号に含まれる低周波成分を含む)にある信号は、正常な神経伝達系の信号に干渉して体内の恒常性維持の調整機能に妨害信号を与えると考えられます。
 超低周波音による健康被害は電磁波の健康被害に比べ古くから知られています。脳内の伝達機構は、神経信号への変換や情報認識までの処理が電磁波とは独立ですが、そのあとの大脳辺縁系以降の所作には両者の間には基本的に差異は存在しないと考えられます。したがって、低周波音もいわゆる非熱効果を与えるといわれる低周波電磁波も同一の不快さを発生します。
 これまでの電磁波問題でも明らかになったように、感情や生命維持を制御している脳幹付近でメラトニン、ドーパミン、セレトニンなどの脳内物質の減少を促進する外部低周波信号の増加が、今後一段と人間のハード面だけでなくソフト面からも憂慮されています。
 以上、簡単に音、電磁波と人間(脳)との関係を整理してみました。すなわち、妨害の発生源である外部の低周波音も低周波成分を含む電磁波も人間内部の脳が受ける不快な感覚・症状からは、どちらであるかを特定できないということになります。発生源を特定できるためには、原理的に音には騒音計、電磁波にはガウスメータを用いるのが客観的であり正しい方法といえます。しかし、簡略的には、道具を用いずに人間の目による視覚と耳による聴覚で周囲を見渡すことにより、多くの場合、発生源の特定は可能となります。
 ここからは以上の観点により、前号の記事と対応させて解説を試みます。〔 〕内は前号記事。(毎日新聞3月27日記事見出しの「頭の中でエンジン音」記事については、筆者の手元の版は「基地局周辺にトラブルが多い」という要旨の一般的記事の差し替え版になっていて、残念ながら健康被害の様子については確認できなかった)
〔 昨日の毎日新聞の朝刊に、「携帯基地局周辺で健康被害」の記事を拝見しました。
 携帯基地局と言えば電磁波ということで、それを唯一の観点として、電話局も総務省も「問題なし」一点張りです。
 しかし、この記事を拝見しますと、これは電磁波の問題ではなく、低周波音被害の問題だと考えます。  略
エンジンのような低音とは、低周波音被害者がしばしば使う被害者の表現です。
 頭の中に響くとは、低周波音に対して普通の聴覚ルート(外耳→中耳→内耳)ではなく、低周波音が頭蓋骨を貫通して直接内耳や脳に達して聴取していることの表現であると理解しております。〕
 脳内の音感覚を言葉による表現から推察することは難しいのですが、文献1)に「低周波高電界は音感を生じさせる」や「パルス電波では、ジジ・・などの音が聞こえるマイクロ波パルス電波の可聴と呼ばれる現象があり、パルス電波が脳内の組織を急激に熱刺激して膨張させる、熱弾性効果による蝸牛殻への圧力波と説明されている」とあります。第3世代携帯電話の基地局が近くにあれば、強いマイクロ波レベルのパルス電波によって、いわゆる熱効果による幻聴であるとも考えられます。また、電波の反射などによる振幅変動がもつ低周波成分による脳内への雑音による幻聴であることも考えられます。電磁界(特に低周波)は体内に入りやすい性質を持っています。
 もちろん、エンジン音の発生源が周辺にあれば、低周波音が原因であるともいえます。はじめに述べた特定の方法により確認することが必要になります。
 低周波音の頭蓋骨貫通に関して、強い超低周波音(振動)においては空間を隔てても頭蓋骨が振動状態になる可能性はありますが、音感覚以前の危険な状態であるといえます。一時、骨伝導型の携帯電話の広告があり、脳障害の誘因になるのではと心配しましたが、空気を隔てた音では、ほとんどは反射され、骨内では減衰された微弱な音となるため、骨伝導型の携帯電話では空気を隔てずに直接骨に接触させて用います。
〔(4)生活環境が低周波音に長時間、長期間連続でさらされ続けることが、小さな音圧でも低周波音被害者を発生させます。
 被害者がすぐ発生することは少なく、数週間、数ヶ月、数年後に発症します。
個人差が著しく、同一家族でもひどく苦しむ人と平気な人とがあります。
 被害症状は不定愁訴です。記事にある、不眠、頭痛、食欲不振などがそれです。病院でいくら検査しても、客観的な所見はありません。
 一旦発症すれば、どんどん鋭敏化していきます。やがて、自宅とは別の場所でも、低周波音を鋭敏に感じ取るようになります。
音源が停止しない限り被害は続き、転居しか対策はありません。〕
 (4)以下は「音」を「電磁波」と読み変えれば、電磁波による健康被害と完全に一致します。これは脳内の大脳辺縁系がまさに、低周波系公害の影響下にあることを示しています。これらは化学物質過敏症などでも言われていることと一致します。
参考文献
1)徳丸仁:「電波は危なくないか」1989,講談社ブルーバックス
2)電気学会:「電磁界の生体効果と計測」1995,コロナ社             (山梨大学工学部コンピュータ・メディア工学科)