がうす通信第85号(2007/6/16)


株主運動ニュースNo.168に掲載の文を転載

「オール電化」を<エコ>と言ってはならない
東京電力によるテレビCMでは「オール電化」が繰り返し流され、クリーンなイメージとともに「エコ」が強調されている。電力料金のシステム、家庭でのエネルギー消費の選択としてそれは正しいCMと言えるものかどうか。もともと熱源に電気を使うのは効率のいいものではないが、研究機関などのデータを見てみると、CMには大きな問題があることは明らかだ。
例えば、オール電化で電力会社が目玉の一つとしている「エコキュート」について。単体ではガス湯沸かし器よりも効率が高いように見えるが、電力のエネルギー源である石油、石炭、原子力、天然ガス等からエネルギー転換していく過程でのロスや、実際のヒートポンプの効率が名目より低いこと、貯湯タンクからの熱ロスの大きさからして、実際の効率はガスにかなわない。
電力・ガス会社等の公開情報に基づくある試算によると、エコキュートの総合効率はガス湯沸かし器の約72%しかなく、CO2の排出は28%増となる。CO2の排出についても、電力はガスの30〜60%増であり、「エコ」などではない。オール電化は温暖化防止に役立つどころか、CO2排出に拍車をかけるシステムなのである。
 IH調理器についても、やはり一見熱効率が良い。それだけを比較すればIHの熱効率が83%なのに対して、ガスコンロは45%となる。しかし同様に発電から送電、熱変換も含めての総合効率で計算すれば、都市ガスのほうが41%効率がよく、さらに内燃式ガスコンロなら76%も効率が良いのである。
さらに問題は、その電磁場による健康への悪影響が懸念されることである。計測した結果では、体の位置で100ミリガウスを超えるものもある。電磁場の基準値が日本にまだないことから経済産業省で制定に向けて検討が始まっているが、高圧線の下の居住環境では4ミリガウスで小児白血病などのリスクがあることがすでに報告されている。文部科学省の予算による国立環境研究所の調査で判明しているのだ。このリスクの数値よりはるかに大きな磁場をIH調理器は発生させている。
今の段階でよく引用される国際機関(ICNIRP)のガイドラインは大変甘いもの(IH調理器の場合の周波数では62.5ミリガウス)だが、これさえも超えることがあることが分かっている。このような電磁場の安全性への疑問にふたをしたまま、IH調理器はクリーンだと宣伝されている。東電は家電メーカーと共同でリスクを表面化させない役割を担っていることになる。
 オール電化で深夜電力を利用した温水器を使うことで、トータルの電気料金が下がるしくみがあるが、これは原発などの夜間の電気を使わせるためのもの。料金の体系で値を下げて経済的というのと、環境保全としての、CO2排出量などの節減とは意味が違う。夜間電力は沸かしたお湯が、使うまでに貯湯タンクの中でかなり冷めてしまうことなどの熱損失(平均25%)があり、また冷房は暑い日中にしか意味がない。それは安い料金が省エネとイコールで結びついていないことを表している。このような料金体系は環境保全と逆行するものである。

つまりオール電化住宅は、二酸化炭素排出量の削減にはならない。そればかりか災害などによる停電時(震災・台風・豪雨・大雪・猛暑等)にエネルギー確保ができなくなってしまうという大きなリスクもある。結局のところ、オール電化ではCMで言うような快適で、エコな生活にはならない。
これらのことは言わず、オール電化があたかも環境に良いように「エコ」の名を使い宣伝するのは消費者に対して不誠実である。誤解を与えるCMをしてはならないのであり、このような「オール電化」の推進こそが環境問題の改善を間違った方向に導いているのである。(ガウスネット 懸樋)


高木学校ブックレット『受ける?受けない?エックス線 CT検査』

高木学校 医療被ばく研究グループ 瀬川嘉之

高木学校は、長年にわたって核・原子力、プルトニウム問題に取り組んできた高木仁三郎が1998年に設立しました。以来、原子力に関係する防災や教育はじめ、エネルギー、化学物質やリサイクルなど科学技術と市民社会に関わる問題を扱ってきました。2004年、国際的医学雑誌に日本が世界一医療検査でのエックス線による被ばくが多いとする論文が出て、日本の新聞にも大きく取り上げられました。この10年急激に増えているCT(コンピューター断層撮影)は、胸の検査と同じエックス線を使っていますが、被ばく量が胸の検査の0.05mSv(ミリシーベルト)に対し10mSvと200倍にもなります。となると、論文に出て報道された以上に日本の医療被ばくは突出しているのだと考え、放射線への被ばくという意味では核・原子力とも切り離せないこの問題に高木学校としても積極的に取り組むことにしました。 
 医療被ばくはやたらに検査をしたがる医療業界の問題でもあります。mSvといった単位の被ばく量がわかるにもかかわらず、知らせてこなかった放射線の専門家や行政の問題でもあります。高木学校では「医療被ばく記録手帳」を市民版として作成し、広く頒布してきました。CT検査やエックス検査を受けたら医師や技師にその線量を聞いて、からだのどの部位の検査だったかとともに記録するものです。放射線による被ばくは、ひとりの人が生涯に自然にあびる100mSvくらいまでの範囲では主として発がんの確率を高める影響として現われます。どれだけの人が放射線によって発がんするかの確率は、これまでにあびた被ばくの総量に比例します。1回1回の被ばく量よりもそれらを累積して足し合わせた総量が問題なのです。ここに記録することの大切さがあります。検査を受ける人や患者が線量を聞くことによって医師や技師も放射線検査の必要性を考え、線量を最小限にしようと配慮するようになるのでは、と期待しています。 
 また、放射線の被ばく総量が発がんの確率を高めるのは、みなさん一人ひとりのからだを構成する60兆個の細胞の中の最も大事な遺伝子を傷つけ、その修復のまちがいが増えることによって、がんが発生する生物学的なしくみからも言えることです。広島・長崎の被爆者の最も大規模広範囲で長期にわたるデータからも言えることです。そのあたりのことを中心にブックレット『受ける?受けない?エックス線 CT検査』に解説しました。線量を記録するにあたって知識として持っておくとよいことをまとめましたので、ぜひお読みください。
 化学物質や電磁波にくらべて放射線は狭い範囲の遺伝子をたくさん傷つけるので修復のまちがいも多くなり、がんにつながりやすいのです。病院での検査や治療で放射線が必要だと医師が判断する場合もあるでしょう。土から出る放射線や空からふってくる放射線をあびるのは避けられません。がんは、単一の原因ではなく、複合的な要因の積み重ねによって発症にいたる病気です。現代社会では食品や大気、水の中の化学物質、そして近年特に増えている身の回りの電磁波など、発がんにつながる可能性のある要素が増えています。危険性のある要素の中で避けられるものはできるだけ避け、必要にせまられてからだに取り込んだり、被ばくするにしても、最小限にとどめる手立てを講じていきたいものです。
 高木学校の取り組みのうち、記録手帳については、毎日新聞2005年11月28日、中日新聞2006年2月3日、ブックレットについては信濃毎日新聞2006年12月3日、朝日新聞2006年12月25日に取り上げられています。ご参照ください。また、ブックレット(記録手帳が付いて)300円、医療被ばく記録手帳(カバー付き)50円のご注文は下記へどうぞ。

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