がうす通信第85号(2007/6/16)


経産省 電力設備の基準値作りへ

ワーキンググループ 第一回会議開催 6月1日

 経済産業省は、送電線、変電所の磁場について、基準値の制定に向けて検討を開始した。電場の基準はあったが、磁場についてはこれまで基準値は定められていなかった。
 WHOがこの問題について近々最終的な報告を出すことが明らかになったのに合わせ、日本でも電気事業法の改正を目指すものとみられる。
 6月1日、総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の電力安全小委員会に有識者、電力会社、消費者団体などが加わる作業部会が第一回目の会合を開催した。委員は5月16日に公表され、以下の12人となっている。

電力設備電磁界ワーキンググループ委員名簿

<主査>
横山 明彦  東京大学大学院工学系研究科教授
<委員>
大久保千代次  明治薬科大学環境生体学教授
大山 力    横浜国立大学大学院工学研究院教授
吉川 肇子   慶應義塾大学商学部准教授
小島 正美   毎日新聞社生活家庭部編集委員
多氣 昌生   首都大学東京都市教養学部教授
能見 和司   電気事業連合会工務部長
飛田 恵理子  東京都地域婦人団体連盟生活環境部副部長
藤村 勝    (独)国民生活センター理事
宮越 順二   弘前大学大学院保健学研究科教授
山口 直人   東京女子医科大学衛生学公衆衛生学第二講座教授
山内 善明   弁護士

この回を含め合計4回の審議を秋までに行い、報告書を取りまとめる方針。
会合は公開だったので傍聴者が約50人あった。山口教授のみ欠席。関西から毎日放送のテレビカメラも見守る中、会議開始。その後数分、カメラは会議室から出された。このことで取材陣は「約束が違う」と少々押し問答があった。
経産省から、この作業部会の検討事項については、

1、現状と課題
 送電線などの電力設備から発生する電磁界の対策については、電界の規制について人への感知の防止の観点から電気設備の技術基準(省令)において、3kV/mを導入しているが、磁界についての基準は定められていない。
 世界保健機構(WHO)が、電磁界に関する環境保健基準(EHC)について検討を進めており、国内外の研究、国際的な規制の状況等を踏まえ、電力設備から発生する電磁界に関する規制のあり方を検討する必要がある。

2、検討内容
 送電線などの電力設備から発生する電磁界の一般公衆に与える健康影響を対象として、国内外の研究、国際的な規制の状況、WHOの環境保健基準等を踏まえた規制のあり方、講ずるべき対策等について検討する。

3、検討スケジュール(予定)
 以下のとおり、4回の審議を行い、本年秋頃までに報告書を取りまとめる。
第1回・ワーキンググループの検討事項について・電力設備から発生する電磁界に関する経済産業省の取り組みについて。
第2回・世界保健機構(WHO)の環境保健基準(EHC)について・海外の電磁界の規制について。
第3回・規制のあり方等について。
第4回・報告書

近畿エリアではテレビニュースに

この日の近畿エリアでは毎日放送のニュース番組「VOICE」で「電磁界対策に国がワーキンググループ」として報道された。カロリンスカ研究所の0.3μTで小児白血病3.8倍とのレポートから始まり、生前の兜氏が「対応可能であれば回避したほうがいい」と疫学調査の結果を踏まえたコメントをしている場面もあった。岡山大学の津田教授は日本ではこの問題で議論が全くされていない、と語る。会議後の大久保千代次氏はインタビューに答えて「疫学結果があるからすぐに規制に入るということはできない。小児白血病との関連をこれからどうするかの議論のためのワーキンググループだ」と語った。

疫学研究結果を支持する委員なく「影響はごく弱い」を強調する面々

作業部会傍聴の記録    懸樋

ワーキンググループの人選の課程で申し入れをしようとしたが、経済産業省の担当部署は多忙を理由に拒否。会議の日の直前になって「申し入れ書は会議終了後に廊下で受け取る」と返事があった。グループの委員が御用学者でないことや、公正・中立に行われるような人選が行われるよう申し入れようとしたが出来なかった。人選はあくまでも経済産業省が誰の意見も聞かずに「ご意見無用」で決定したかったようだ。
 その顔ぶれをみると、一見かなりの公平性を確保しようとしたかにもみえる。文部科学省が国立環境研究所の兜氏をリーダーとする疫学研究の評価委員会を作ったときのように悪質なものには見えないような配慮はされている。あのときには何しろ委員が誰なのかも公表されないまま「評価」が続けられていたし、消費者団体の代表というのも御用団体であった。
 今回はそれに比べれば毎日新聞の編集委員や国民生活センターの理事といった方に加え、東京地域婦人団体連盟の方の名前も見える。
 しかし文部科学省の兜研究をもみつぶした評価委員会にいて唯一の「電磁波専門家」の多氣昌生教授の名前がまたも登場している。電磁波の安全性を主張するのが彼ひとりなら活発な議論の中で問題点は浮き彫りにされていくものと期待できるだろう。残念なことに第一回からしてその期待は裏切られた。
 委員がこれまでの調査内容などについて質問すると経済産業省の担当者がそれに答え、それに対して専門家として宮越教授、多氣教授が解説するというパターンで、素人の質問に専門家が回答している、という形式が出来ていた。多氣教授は「疫学調査は選択バイアスという問題があり、不確定なもの」と説明し、大久保千代次教授は「IARCの発ガン性ランクが2Bとされたのは生物学的な研究結果が出ていないからだ」と回答して、疫学研究は不確実で結果は基準に適用できないことを断定的に語っている。また、兜研究を正当に評価し、先の隠蔽事件を検証するべきというような議論はなく、さらにIARCの発がん性可能性ありについての認定を基準に適用するように主張するような意見もなかった。

WHO 電磁波防護対策ワークショップ スイスで

来たる6月20日〜21日、スイスのジュネーブでWHOの国際電磁波ワークショップが開かれる。このワークショップの目的は、WHOが近々発表する極超長波クライテリアに反映させるために、低コストで行える電磁波対策を話し合うことである。各国政府の代表者、産業界、消費者グループの参加が予定されている。
 議案にあげられているワークショップ目標は次の通りである。
1.低コストの極超長波防護対策を薦めるための裏付けとなる科学的知識と持続不確実性を列挙すること。
2.健康経済学的な議論を踏まえて、公衆衛生のあるべき姿を提示すること。
3.住宅内での極超長波源を再確認すること。また、電磁波暴露を減らすための方法とコストを再検討すること。
4.政府や事業者に働きかけて現実的で効果的な政策を推進しようとしている国々の政策を再確認すること。
5.さまざまな選択肢のコストと実現可能性、またその他の要素(例:土地の値段、土地の規模、経済成長、電磁波に関する市民の不安、エネルギー需要)を考慮すること。
6. 電磁波問題について市民とコミュニケーションをはかるように政府を支援すること。