がうす通信第87号(2007/10/15)


「兜研究をつぶし葬ったのは文科省調整官」 

 松本健造氏著「告発・電磁波公害」が暴露

高圧線の電磁場と小児白血病の関連に関する日本での唯一の本格的な疫学調査いわゆる兜研究は、文部科学省の「評価」によって隠蔽され、葬られたことは、この通信でも、他のマスコミなどでも再三にわたり訴えられてきた。そして今もってこのリスクが国レベルで認められていないことになっているのが現状だ。
 しかし松本氏の書いた本によると、このリスク報告をつぶしたのが誰で、どのように行われたかが詳細に記されている。
 「抹殺」の張本人は評価委員会の委員の中にいたのではなく、オブザーバーとして担当官となったがん研究調整官だった。
 このいきさつがあきらかになったのは、民主党の櫻井充議員からの質問主意書によって一問一答が詳細に記された議事録が入手されたためだ。この調整官という役人は、ヒアリング直前に疫学調査の担当事務局であるライフサイエンス課に移動してきた。ワーキンググループの第一回会合が2002年10月7日に開かれ、11月18日に兜研究官らのヒアリングが行われたその直前の10月1日のことである。

 議事録の最初の半分は委員たちの見当違いの質問などで、比較的穏やかなやりとりで進んでいる。送電線や電気製品などから出る超低周波電磁波と小児白血病や小児脳腫瘍との関連を調べるために行われた研究なのに、その前提すら理解しない委員もいて「なぜ小児がんだけを調べるのか、携帯電話やパソコンの調査をしないのか」などとまくしたてて面食らった兜研究官は説明に四苦八苦していた、という。
 ところが、突然、この調整官が割り込んで兜氏への厳しい追及が始まった。委員たちは口を挟むこともできず、2人の議論が延々と続いた。質疑応答の全8ページのうち2ページ余りが2人のやりとりで埋まっている。そして、セレクションバイアスの指摘や根拠が弱い、などと言い、送電線と白血病の関連を示す記載を研究の結論から削除するように求めた。このことはどの委員も発言していなかったが、文科省の評価結果報告書では、詳しく取り上げられ、最低評価の重要な根拠として示されていた。
 議事概要の中でも「これだけのデータで結論を出すのは早すぎる」などの発言をした「委員」が、この調整官だった。オブザーバーが評価にも加わっていたのだ。文科省の事務局が勝手に、調整官の意見をワーキンググループの意見としてまとめたのは確かだ。
 なぜこんなやり方がまかり通ったのか。ある委員はこう打ち明けた。「最初から、あの研究はやめさせよう、つぶそうという空気につつまれていた」
 以上は本の要約であり議事録と当時の委員らの証言に基づいている。ガウスネットの推論でもなんでもない。本にはもっと詳細にいきさつが書かれているのでぜひご講読をお勧めする。
 「告発・電磁波公害」(1900円+税)は緑風出版から9月25日発刊されている。