がうす通信第90号(2008/4/1)


EEA EU環境保護局 高周波では0.1μW/cuを推奨 

バイオイニシアティブレポート(前号で趣旨既報)

 EU環境保護局がその方針に採用している「バイオイニシアティブ報告」は高周波の部分では、携帯電話基地局などの影響を受ける環境では0.1μW/?を提唱していることを前号89号に紹介した。電力設備については2ミリガウス、子どもや妊婦の居住する場合は1ミリガウスの基準値を提唱している(88号)。
  報告では携帯電話基地局、無線LAN、など高周波電磁波の影響について、潜在的な健康リスクが存在することを認め、小さなレベルの無線被曝(慢性被曝)も現在、安全性を主張することができない、ことなどを述べている。
  現在の規制制限以下の被曝レベルで、最初のがん遺伝子の活性化で変化を起こすかもしれず、結果としてDNA損傷と染色体逸脱、学習の遅れ、運動機能の遅れ、など示唆する証拠があるとし、基地局から数100m以内に住む人々に病気の影響を作るという研究報告で信用できる文献がある、とする。そこで携帯電話アンテナ、等の高周波発生源、パルス波の屋外の累積的な高周波被曝について警告的な目標 レベルとして0.1μW/cuを提案している。
  また、特に子どもたちについて潜在的な健康影響についてもっと多くのことがわかるまで、高周波電磁波に影響を受けないようにするため学校や図書館では無線ランに代わって有線が設置されることを勧め、予防的措置を推奨している。
 以下に概要を抜粋、まとめ部分について紹介する。翻訳は加藤やすこさん。

 . RF に関する新しい被曝基準の定義

  利用できる科学的証拠を考えると(セクション17)、生物影響を起こすと報告されたレベルでパルス波のRF へ慢性的に人々を被曝させ、次いで、深刻な健康影響につながると論理的に推定される新しい無線技術の急速な開発は、公衆衛生上の懸念だ。セクション17 は、予防的行動が一般の人々のRF 被曝を減らす、または最小限にすることを正式に認める公衆衛生勧告に至った証拠を要約した。それは、現在の規制限度値以下の被曝レベルで、RF 被曝が細胞膜の機能や細胞コミュニケーション、細胞代謝、最初のがん遺伝子の活性化で変化を起こすかもしれず、ストレスたんぱく質の産生を誘発することを強く暗示する証拠を示す。結果として起きる影響は、DNA損傷と染色体逸脱、脳神経の死を含む細胞死、フリーラジカル産生の増加、内発的なオピオイド系の活性化、細胞ストレスと早まった老化、記憶消失を含む脳機能の変化、子どもの学習や運動機能の遅れ、子どものその他の行動損傷、頭痛、疲労、睡眠障害、神経変性状態、メラトニン分泌の減少とがんを含む(セクション5、6、7、8、9、10、12)。
  2000 年頃、生体電磁気学の何人かの専門家が、パルス波のRF への環境中の屋外での被曝について0.1μW/cu(約0.614V/m)限度値を奨励した。市街地では一般的に、パルス波の無線周波数(たとえば、携帯電話タワー、その他の無線技術)への不本意な被曝から十分に守られるだろう。2000 年のザルツブルグ決議は、パルス波の無線周波数への公衆被曝について0.1μW/ cu(約0.614V/m)の目標を設定した(訳注:オーストリア、ザルツブルグ州は、2002 年2 月、屋外で0.001μW/ cu屋内で0.0001μW/ cuという、さらに厳しい値を勧告している)。それ以来、弱いレベルの無線送信機(無線の音声、データ通信アンテナ)の近くに住む人の間で、体調不良や病気の数多くの信用できる事例報告がある。その影響は、睡眠障害、記憶力と集中力の損傷、疲労、頭痛、皮膚障害、視覚症状(飛蚊症)、吐き気、食欲不振、耳鳴り、心臓の問題(鼓動が速くなる)を含む。携帯電話タワーのRF 被曝レベル(概算で0.01〜0.5μW/ cu)が、無線アンテナ基地局から数百m以内に住む人々を病気にする影響を作るという研究報告で、いくつかの信用できる文献がある。
  この資料は今、全身被曝に関する現在のFCCやICNIRP の基準より十分に低いガイドラインやしきい値について論じる。公衆衛生の見地から慎重になるために、そのような基準をどのくらい低くしなくてはいけないか、という不確実性があるけれども、不確実性を理由にして、現在利用できる情報に対応する正当な努力を妨げるべきではない。RF の有害な健康影響と生体影響について、低い限度値は確立されていない。例えば、無線LANとWI-FI システムの潜在的な健康リスクは更なる研究が必要で、どんなレベルでの無線被曝(慢性被曝)も現在、安全性を主張することができないからだ。報告された人間の健康影響についての低い限度値は、携帯電話とPDAの場合、安全基準の100分の1、離れた携帯電話タワー、WI-FI、無線LAN機器の場合は1000 分の1 から10000分の1に引き下げた。安全基準のための十分な根拠は疑問を出現させ、どんなレベルでもRF の安全性を問うことは不適当ではない。
  携帯電話アンテナ、WI-FI、WI-MAX からのRF 発生源、その他の同様の発生源に適用される、周囲の無線に関するパルス波RF 被曝のための警告的な目標レベルが提案された。これらの被曝が一般の人々に影響を与えるパルス波のRF について、勧告される警告的な目標レベルは、0.1μW/ cu(約0.614V/m)だ。屋外の累積的なRF 被曝について、0.1μW/ cu(約0.614V/m)の予防的制限が採用されるべきだ。これは現在のRF 科学と、人々が暮らし、働き、通学する場所でのパルス波のRF(環境)被曝について適切に定められる慎重な公衆衛生上の対応を反映する。環境中のRF レベルは全身被曝として経験され、携帯電話やペイジャー、PDAやその他の無線周波数電磁波の発生源の音声やデータ送信の無線サービスエリアのある場所で、人々を慢性的に被曝させる。0.1μW/ cuの屋外の予防限度値は、屋内ではおそらく0.01μW/ cuと同じくらい低くなることを意味する(訳注:欧州に多い石造りの家は、屋内で大幅に被曝量が減るが、日本で一般的な薄い木材を利用した家屋は、被曝量が屋外とほとんど変わらない)。病気に関する数多くの個々の事例に基づく報告といくつかの研究が、これよりも低いレベルで報告されてきた。しかし、目標レベルは今のところ、そのような設備の最も近くにいる人々の、もっとも不釣り合いな負荷を、いくらか防ぐことができるだろう。
  このRF 目標レベルは、WI-FI 技術の更なる新製品の公開を妨げないが、私たちはWI-FI に変わって有線が、とくに学校や図書館で設置されることも勧める。潜在的な健康影響についてもっと多くのことがわかるまで、子どもたちが上昇するRF レベルに影響を受けないようにするためだ。この勧告は、一時的な予防的限度値として理解されるべきだ。予防的行動が導かれることを意図しており、将来はさらに慎重な限度値が必要とされるだろう。
  AM、FM、テレビアンテナ送信からの上昇するRFレベルに近隣の住民を慢性的に被曝させる放送施設も、携帯電話などの無線周波数送信施設(アンテナ群)に近い、非常に高いRF 被曝の可能性を与えているという公衆衛生上の懸念がある。いくつかの送信施設から半マイル(訳注:約800m)以内の居住地域では、RF レベルは数十から数百μW/ cuになるだろう(たとえば、コロラド州のルックアウトマウンテンやオレゴン州のベンドのオウベリー・ビュッテなど)。強いRF レベルに学校や居住者を被曝させ、被曝させる場所に位置するそのような施設は、安全性のために再評価される必要がある。
  無線機器(携帯電話、個人用デジタル・アシスタント、PDA機器等)からの照射について、今や、それらの機器使用に対する介入が正式に認められる、脳腫瘍や聴神経腫のリスクを増やす十分な証拠がある。携帯電話やPDAの再設計は、例えば、有線のヘッドセットやスピーカーホーン・モードでだけ作動するような新しい装置の設計によって、直接的な頭や目への被曝を防ぐことができるだろう。
  これらの影響は、慢性的でコントロールできない被曝のせいで病気や健康に有害な影響につながり、子どもたちはとくに傷つきやすい、と論理的に推定できる。幼いものは、たいていの場合、そのような環境から自分で移動することができない。間接喫煙のような間接的な電磁波は、利用できる証拠に基づく公衆衛生上の懸念の問題点だ。

X.結論

・私たちには、「いつも通りのビジネス」をする余裕はもう無い。新しい送電線を計画する時、そしてそれらの周辺に家、学校、その他の居住施設を計画する時、低いELF環境のための慣例的な準備が行なわれる時が来た。新しい無線機器を、いつも通りのビジネスで配置することは、社会が限度値についてすぐに啓蒙的な決定をしなければ、変更するのが難しく、リスクがあるように見える。新しい無線技術に関わるRF 被曝のどのレベルが受け入れられるのか、明確にするために研究を続けなくてはいけない。しかし、更なる研究が明日の生活と社会の混乱、金銭を守る実際の変化を、今日、妨げ、遅らせてはいけない。
ELF の新しい規制限度値が正式に認められる。ELF 限度値は、病気のリスクを増やす小児白血病研究で結びつけられた被曝レベル以下に合わせ、付加的な安全要因を加えるべきだ。危険性があると確定されたELF 環境(通常2mG以上のレベル)に人々を曝す、新しい送電線や電気設備を建てることは、もはや受け入れられない。
・新しいELF 限度値が作られ実行される間、合理的なアプローチは、全ての新しい、または増設する送電線に近い居住空間用に計画する限度値は1mGで、それ以外の新しい建築物の限度値は2mGだろう。子どもや妊娠した女性がいる居住空間用に1mGの限度値が設けられることも勧告される。この勧告は、自分で身を守ることができない子どもたちや、規制行動の引き金になる伝統的に十分に高い率で小児白血病のリスクを持つ子どもたちのために、防護の高い責務が求められるという前提に基づいている。この状況はとくに、居住空間に1mGの限度値が適用される範囲を広げることを保証する。この場合の「制定」は、おそらく、関連する健康機関からの公式な公開された報告を意味する。
・短期間で、現在ある全ての電気配線システムを再建するのは現実的ではないが、とくに子どもたちが過ごす場所で、これらの現存するシステムから被曝を減らす処置が始められ、奨励されるべきだ。
・屋外の累積的なRF 被曝について、0.1μW/ cu(約0.614V/m)の予防的限度値が採用されるべきだ。これは現在のRF 科学と慎重な公衆衛生上の対応を反映する。それは、人々が暮らし、働き、通学する場所でのパルス波のRF(環境)被曝について正当に定められるだろう。RF のこのレベルは、全身被曝として経験され、携帯電話やペイジャー、PDAやその他の無線周波数電磁波の発生源に関する音声やデータ送信の無線サービスエリアのある場所で、人々を慢性的に被曝させる。病気に関する数多くの個々の事例に基づく報告といくつかの研究が、これよりも低いレベルで報告されてきた。しかし、この目標レベルは今のところ、そのような設備の最も近くにいる人々の、もっとも不釣り合いな負荷をいくらか防ぐことができるだろう。このRF 目標レベルは、WI-FI 技術の更なる新製品の公開を妨げないが、私たちはWI-FI に変わって有線が、とくに学校や図書館で設置されることも勧める。子どもたちは、潜在的な健康影響についてもっと多くのことがわかるまで、子どもたちが上昇するRF レベルに影響を受けないようにするためだ。この勧告は、一時的な予防的限度値として理解されるべきだ。予防的行動が導かれることを意図しており、将来はさらに用心深い限度値が必要とされるだろう。


  『電磁波訴訟の判例と理論

−米国の現状と日本の展望―』

   法政大学教授 永野秀雄著   三和書籍  280頁 3600円+税

電磁波訴訟に関するわが国初の本格的解説書が出版された。日本でも次第に多くなってきている電磁波関連の訴訟だが、米では以前より多くの事例が出されている。米で提訴された訴訟が、どのような事実関係により、どのような判決が下されたのかについて、言及している記事や論文はほとんどない中、この書は、米国での電磁波訴訟の現状と争点を分析し、そこで適用されている法理論を明らかにしている。

    【目次】

第一章     米国における電磁波問題と訴訟の類型
第二章    人身損害賠償請求訴訟
第三章    労働者災害補償保険法に基づく請求
第四章    不法侵害・私的ニューサンスに基づく不動産損害賠償請求訴訟
第五章    電磁波関連施設建設のための公用収用による残地の不動産価値下落
第六章    1996年連邦通信法と携帯電話基地局設置制限条例
第七章 わが国における電磁波関連の歩的紛争の検討