がうす通信第99号(2009/10/5)


「携帯電話と癌に相関あり」報告 『国際電磁波共同研究会』

 「インターフォン研究」の不備も指摘

国際的科学者グループが先ごろ発表した報告書によって携帯電話の使用と脳腫瘍の相関への懸念が再び高まってきた。
  「国際電磁波共同研究会」(International EMF Collaborative)というグループが発表した37ページの報告書には、特に子供の携帯電話の使用に伴う危険性がまとめられており、現在、西ヨーロッパを中心にした13カ国の携帯電話業界によって進んでいる研究に対して批判の鉾となりそうである。この報告によると最近のスウェーデンの研究で10代の携帯電話使用者では400%の相関の増加が見られたという。
  報告書の著者であるロイド・モーガン氏はインタビューに「健康への懸念からすでに子供の携帯電話を禁止しようとしている国もある。フランスでは小学校の子供たちに携帯電話はメールを送る以外には使わないようにと言っている」と答えた。
  「携帯電話には適切な使い方があり、それが便利なものであることは確かだ。しかし、脳腫瘍が爆発的に増えないかと心配だ。腫瘍は発症するまで30年を有することから、その時期はまだ先になるにしても…。私の懸念が間違いであることを祈るが、用心してほしい」
  カリフォルニア州、バークリーで活躍した元電子技師でNPO生物電磁波社会の会員であるロイド・モーガン氏が書いた報告書「携帯電話と脳腫瘍:懸念の理由15」は、米国、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、ロシア、スペイン、スウェーデンから43人の科学者や専門家、さらに英国の電磁波政策研究所、ピープル・イニシアティブ基金、ラディエーションリサーチ、放射線調査トラスト、パワーウォッチを含む団体がその証拠を支持している。報告書のコピーと短いビデオはラディエーションリサーチのサイトで見ることができる。
http://www.radiationresearch.org/pdfs/15reasons.asp
  この研究で重要な点は、進行中のインターフォン研究の11の不備を列挙していることである。それら研究は米国以外の13カ国ではこの秋にも提出されることになっている。インターフォン研究のこれらの不備は、すでに発表されたものに基づいており、たとえばポータブル電話に関して、これらの電話は携帯電話のように高周波を出すにもかかわらず、これらを使った人の情報が抜けている研究などがある。共同研究者はインターフォン研究は脳腫瘍の多くのタイプが研究から締め出されており、調査をうけた人のうち誰が死んだか、誰が病気になったかという情報も抜けていると言う。インターフォン研究はより影響を受けやすい子供や青年に関する調査を含んでいないことも指摘した。
  モーガン氏は、携帯電話の使用と脳腫瘍との相関に関する最もぞっとする研究は、「国際腫瘍学ジャーナル」の2009年5月に報告されたレナート・ハーデル教授が率いるスウェーデン科学者チームによる研究であると言う。10代より若い時期にデジタル携帯電話とコードレス電話を使いはじめたると、脳腫瘍のリスクが400%まで跳ね上がるというものだ。ハーデル教授は早くからアナログ携帯電話は癌のリスクを700%増加させることを見出していた。つまり現在世に出ているデジタル携帯電話は電力容量が減った分、それでもリスクは小さくなっているわけである。
【SCforrumのサイトhttp://scforum.info/index.php?topic=3157.0より】

『携帯電話と脳腫瘍・15の懸念理由--インターフォン研究の背後にある科学、話題と真実 Cellphones and Brain Tumors15 Reasons for Concern

Science, Spin and the Truth Behind Interphone August 25, 2009

(報告のうちの一部を抜粋)

要約

業界から独立した研究が一貫して携帯電話使用と脳腫瘍には有意な相関があることを示しているのに比べて、携帯電話業界が出資した研究ははるかに不確かな結果を報告している。現在のICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)とFCC(連邦通信委員会)の暴露基準は単に熱効果が有害であるという間違った前提に基づいている。この点に関して、ヨーロッパ議会は現在の暴露基準の見直しを圧倒的多数で可決した。子供における携帯電話と脳腫瘍との相関は大人のそれと比較してはるかに大きく、勧告や基準を出している国もあるが、強制力のあるものはまだ出ていない。数年の遅れの後、まもなくインターホン研究に携わる13カ国から結果報告の一部がはじめて発表される予定である。

どんな結果が出たとしても、インターホンの基準設定によって報告された結果が業界擁護の方向に歪曲されているため、それらの結果も同様に歪曲されることを前提に了承されるだろう。

テレコム業者の「メディア用声明」は、ワイヤレス電話の使用と脳腫瘍との相関に総力をあげて疑問を呈するだろう。しかし事実は事実である。ジャーナリストには独立した科学的見地に立って報告し、携帯電話使用に伴う危険性を市民に知らせてほしい。また、インターホンの基準設定に関して誰が決定権を握っているのかを徹底的に調べてほしい。コードレス電話の使用に関する質問があったにもかかわらず、コードレス電話の使用者を「暴露のない」人たちとして扱うように決めたのは誰なのか。これは特に調べてほしい点である。当時ワイヤレス電話としてより一般的な形態であったコードレスホンを使用し高レベルの暴露のあったはずの人たちを「暴露のない人たちのグループ」に入れて「携帯電話を使っていた人たちのグループ」と比較したことで、脳腫瘍の発症リスクは低く見積もられる効果があったはずである。

勧告

『携帯電話と脳腫瘍』の著者とその推薦者たちは、ヨーロッパ議会が「電磁波に伴う健康懸念」の評決の結果に則って提言しているすべてのアクションを支持する。われわれはこのアクションリストを最優先課題とするように、それぞれの政府に求めている。

●子供用に設計された携帯電話の宣伝広告を禁止する。

●携帯電話やそれに類似したワイヤレス機器の販売に際しては、まずはそれらの機器に伴う潜在的健康リスクをカバーする損害賠償保険の担保を必要とさせる。

●電磁波暴露基準の科学的根拠と妥当性を再検討する。

●電磁波携帯電話の長期の健康被害ならびにさまざまな異なる電磁波源による他の健康被害、特に子供たちに懸念される健康被害を調査するために、業界の資金と影響力から独立した研究財団を設置する。

●携帯電話の暴露を最小限にするための若い人たち向けの広範囲な啓蒙活動に投資する。

●すべてのワイヤレス機器に対して警告ラベルを貼るように求める。

●高電圧送電線、携帯電話基地局、通信中継線、電話線などから出ている電磁波を表示するマップを配布し、公開する。

●それぞれの国の電磁波暴露の量の年間報告書を発行する。

さらに、われわれはそれぞれの政府に以下の行動をするように求める。

●すべての電磁波源から出る電磁波の暴露による生物学的影響をみるための業界の影響力と資金から独立した包括的調査に出資する。

●自社製品が健康被害をもたらすことを認める携帯電話業界の証拠資料を作成した内部告発者に報酬を与える法律を可決する。

●電磁波暴露の非熱効果をベースにした「生物学的暴露基準」を採用する。電磁波暴露によるただひとつの影響は熱効果であるという誤った前提を使わないこと。

●インターホン研究管理グループがそれぞれの研究がきちんと結果を出せるよう促すための資金として、インターホン研究資金の一部を支給するようすべての政府に呼びかける。例えば、聴覚神経種のリスクについて、携帯電話の使用における腫瘍リスク箇所の特定(携帯電話を使っている東部の側にできる側頭葉腫瘍など)の研究など。もしすべての結果がある日までに発表できなければ、その時にはインターホン研究の政府資金は、テレコム業者に賠償させるようにするべきである。

●すでに報告されたインターホン研究について、コードレスの使用者を「暴露したグループ」に入れてすべて改訂するように求める。重大な設計ミスの訂正したうえで、一定の期限までに改定版の報告を発表するよう求める。さらに、もし決められた日までに発表しなかったら、政府から支給された資金はテレコム業者に返還させるべきである。

携帯電話の使用に関する予防原則

予防原則とは、問題があるかもしれないとする証拠があり、低いコスト又は無料で対処できることがあるなら、それを取り入れようという政策である。俗に言う「転ばぬ先の杖」である。もし携帯電話が脳腫瘍を引き起こすとしたら、潜在的な社会全体の保健医療費は膨大なものになる。携帯電話の電磁波暴露をある程度減少するために(10倍のレベルで)実際にほとんど経費をかけずにできる簡単な方法がある。携帯電話からある程度離れるとその電磁波は減る。距離を少し変えるだけで劇的な効果を生むことになる。たとえば、携帯電話を耳にくっつけて使った場合、携帯電話と頭の距離は2.5mmであるが、もし25cm離して使えば、頭からの距離は100倍になる。

携帯電話にヘッドホンをつけて使うことで、携帯電話は耳に直接あてることがなくなり、電磁波暴露は何倍も減るにちがいない。

政府の強制的アクション

1.              適正な予防的措置としては、耳に当てて使われる現在の携帯電話機器をやめ、携帯電話に直結してイヤホンをつけるように政府が携帯電話会社に命じることであろう。その費用はほとんどかからないはずだ。

2.              携帯電話の暴露に対する若い人たちの影響の受けやすさを考えると、政府は学校に携帯電話の高周波がもたらす潜在的な健康リスクに関する警告文を貼るように命令すべきである。

不備の11 資金バイアス

もし研究が経済的利害関係を伴う団体による資金提供されたものであるなら、発表は利害関係のない資金の研究と比較して利害関係団体に都合の良い発見がされてきた。

ヘンリー・ライ博士はシアトルのワシントン大学で、携帯電話の生物学的研究のデータベースにおいて主張している。この結果(表)は基金バイアスの大きさのデータレポートによる結論である。電磁場は産業界の資金は研究で悪影響を示しているのは28%であるのに、同時期の独立した資金の電磁場研究は67%の電磁場被曝の悪影響を見出している。

 

携帯電話の生物学的研究

 

影響あり

影響なし

 

研究

%全研究

研究

%全研究

研究

%全研究

産業界

資金

27

8.3%

69

21.2%

96

29.4%

28.1%

 

71.9%

 

独立した

資金

154

47.5%

76

23.5%

230

70.6%

67.0%

 

33.0%

 

合計

 

181

55.5%

145

44.5%

326

100.0%

表1:産業界からの資金と独立した資金での携帯電話の生物学的影響